2017年12月20日

『2017年心に残った映画』

『2017年心に残った映画』
毎年、ブログで取り上げた映画作品の中で心に残った映画を選んで公開しています。以前は20の作品を選んでいましたが、一昨年から10本にミニマイズ、今年も10作品を選んでみました。それでは2017年の10作品をブログの公開順で公開しますが、夏以降ブログの更新をサボっていましたので、その時期公開の作品は公式ホームページのURLのリンクが挿入されています。では、2017年心に残った映画たちです。

人生フルーツ
  映画の中で繰り返されるナレーションが何回も繰り返されます。
  『風が吹けば、枯れ葉が落ちる 枯れ葉が落ちれば、土が肥える
   土が肥えれば、果実が実る。こつこつ、ゆっくり。人生、フルーツ。』
  こつこつ、ゆっくり、努力を続けていけば、甘くてみずみずしい果実を得ることができる。
  なんだよ、いまさら、当たり前のことを御大層に書きやがってと思うかもしれません。
  しかし、私はこの映画を見て、その当たり前のことの大切さを痛感したのです。
  日々の生活のなかで、こつこつ、ゆっくり、何かを誠実に積み重ねていくこと。
  出来ることはそれだけなんだ。会社をやめて2年。あと10年位は生きるなかでなにを
  積み重ねていくのか?私は考えねばなりません。

たかが世界の終わり
  12年前に家を出て、その後劇作家として主人公は、家族に自分の死が近いことを伝える
  ため里帰りしますが、母は小さかった頃の主人公を懐かしむばかりで、昔話ばかりを繰り返し、
  妹は劇作家として成功した有名人という目でしか兄を捉えることが出来ず、兄は何故か家に
  戻ってきたルイへの苛立ちを隠さず、弟へ厳しい言葉を投げつけては母と諍いを繰り返す。
  12年ぶりに再開したはずなのに、会話は上滑りし、コミュニケーションが成り立たない家族。
  そんな家族の姿を、グザヴィエ・ドランは極端に顔のアップを多用する映像で描き出します。
  観客は、セリフではなく、俳優たちの顔の表情の変化で、登場人物の心の細かな動きを感じ取る。
  映画を観終えて、やはりグザヴィエ・ドランは天才なんだと感じました。

LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
  主人公は、5歳の時に不幸な出来事により迷子となり、故郷から1,600km離れたコルカタに
  連れて行かれてしまいます。主人公は、コルカタの街を彷徨い、何とか危機を乗り越え、
  孤児院に収容され、幸いなことにオーストラリア人の夫婦に引き取られます。教育を受け、
  立派に成人した主人公は、ある日友人の家のパーティーに招かれたおりに、その家で幼い
  ころに目にしていたインドのお菓子を目にして、突然自分がどうしてオーストラリアに
  引き取られたのかを思い出し、幼いころの記憶を頼りに故郷を探し始めるのです。
  さて、主人公ははどのようにして故郷にたどり着けるのか?感動作です。

ムーンライト
  マイアミの貧困地域で暮らすアフリカ系アメリカ人のシャロンが人生の居場所を求めて
  彷徨う姿を、幼少期・少年期・青年期の三つのステージで描き出した作品です。
  映画が描き出すのは、麻薬の売人や売春でしか生活していけない境遇が現実と地獄のような
  境遇においても助けようと手を差し伸べ、背中を押してくれる人が存在するのだということ。
  そして、『あの夜のことを、今でもずっと、覚えて』いたシャロンとケヴィンの純愛。
 
人生タクシー 
  パナヒ監督はタクシー運転手に扮してセットしたハディカムを時々動かすのみ。
  そして、客に扮した俳優さんがタクシーに乗っては降りていく。
  たったそれだけですが、情報が統制されているテヘランに暮らす人々の人生模様を監督は
  見事にすくい上げ、政権への皮肉と批判を内包する映画を作り上げています。強調したい
  のは映画に漂う上品なユーモア。パナヒ監督すごいですね。

マンチェスター・バイ・ザ・シー
  この作品、非常に説明のしにくい映画です。もちろんネタバレしてもミステリー作品では
  ありませんから致命的なミスになることはありませんが、「映画を見ることは、約2時間
  のあいだ、別の人生を生きてみること」であると私は思っていますので、主人公がどうして
  心を閉じてしまったのかは、映画の進行と一緒に体験したほうが良いのだと考えます。
  ですから、とにかくこの映画を見てほしいとだけ書くことにします。

ありがとう、トニ・エルドマン
  ルーマニアのコンサルタント会社で働いている娘が心配でたまらない父親は、ブカレストに
  娘を訪ねます。オヤジギャグが大好きな父親が苦手な娘は、押しかけてきた父親となんとか
  数日間一緒に過ごし、ようやく帰ってくれた父親を見送って一安心しますが、父親は娘が
  大きなストレスを抱えていることに気づき、トニ・エルドマンという別人に成り切って
  娘の前に現れて娘を救おうと悪戦苦闘を繰り返すというストーリー。
  ずっと下手な演技と寒いギャグを披露する父親にイライラさせられますが、それも監督の
  術中だと気付く頃にはすっかり映画に取り込まれていて、大きな感動を最後に味わう。
  そんな作品でした。東欧が収奪されている現実もしっかりと描きながら、父親と娘の関係
  ついての普遍性を描き出している。マーレン・アデ監督凄いです。
  
ベイビー・ドライバー
  この映画ついては多くを語る必要は無いと思います。
  とにかくこのシーンを観ていただきたい。
  映画『ベイビー・ドライバー』冒頭6分カーチェイス YouTubeより
  このシーンを創り上げたエドガー・ライト監督を讃えたい。
  それからラストシーンも最高です!

否定と肯定
  この映画で主人公を訴えたデイヴィッド・アーヴィングは、ホロコースト否定論者ロイヒター
  によってアウシュヴィッツに送り込まれ、不正な手段で建造物から毒物採取を行い、科学的な
  検証によってガス室は殺人装置として機能できないことを証明したと主張を事実として、真実を
  覆い隠そうとします。もちろんその主張は裁判によって科学的に完膚なきまでに覆されますが
  アーヴィングのように勝手に事実を創り上げてしまう人間を説得することは出来ない。
  映画の原作者、デボラ・E・リップシュタットは、真実がフィクションよりもはるかに脆いもの
  であり、「今、世界は“真実”と“事実”に関する戦いの中にある」と語っています。
  大統領がフェイクニュースを垂れ流し、歴史修正主義者が南京を従軍慰安婦を否定する
  この現代にこそ観るべき映画であると思いました。

花筐
  『SW最後のジェダイ』を10本目に選ぶつもりでしたが、12月30日に観た『花筐』が、あまりに
  美しくて、あまりに悲しくて、あまりに切実だったので、この映画に選び直しました。
  大林監督の繰り出す映像の奔流に目を奪われた2時間49分。
  声高に反戦を叫ばず、いったん始まってしまえば戦争に抵抗できないものの、自由に生きたい、
  戦争に殺されたくないと願う人々を描こうとする監督は、やがて始まるであろう戦争のあとの
  平和をも視野に入れているかのようです。

『ブレードランナーとスターウォーズ』
『ブレードランナー 2049』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の二作品も是非とも選びたい作品でした。今年2回観たのはこの二作品だけですし、新しい続編を創り上げるのだという監督の努力により、ブレードランナーを生み出したリドリー・スコット、スターウォーズを生み出したジョージ・ルーカス、それぞれの時代は終わったことを感じさせてくれる作品になったいたと思います。
この二作品、これから何回も見返すのでしょうね。
 
『2017年に観た映画一覧 順不同』
2017年に観た作品一覧を以下にまとめました。2013年が71作品、2014年が70作品、2015年が47作品、2016年が72作品、そして今年は53作品でした。今年は出足は好調だったのですが、春以降中だるみで作品数が伸びませんでした。でも、今年は素晴らしい作品が多かった印象があります。では今年観た作品です。

1.人生フルーツ、2.標的の島 風かたか、3.ダーティ・グランパ、4.沈黙−サイレンス−、5.スノーデン、6.未来を花束にして、7.ザ・コンサルタント、8.マグニフィセント・セブン、9.ラ・ラ・ランド、10.たかが世界の終わり、11.王様のためのホログラム、12.アシュラ、13.トリプルX:再起動、14.ラビング 愛という名前のふたり、15.お嬢さん、16.キングコング 髑髏島の巨神、17.ムーンライト、18.ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命、19.LION/ライオン 25年目のただいま、20.ゴースト・イン・ザ・シェル、21.クー嶺街少年殺人事件、22.人生タクシー23.T2 トレインスポッティング、24.ワイルド・スピード ICE BREAK、25.まるでいつもの夜みたいに〜高田渡 東京ラストライブ、26.ノー・エスケープ 自由への国境、27.ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス、28.マンチェスター・バイ・ザ・シー、29.メッセージ、30.LOGAN ローガン、31.20センチュリー・ウーマン、32.セールスマン 、33.ありがとう、トニ・エルドマン、34.ふたりの旅路、35.裁き、36.ダンケルク、37.ジョン・ウィック:チャプター2、38.ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ、39.ボンジュール、アン、40.スパイダーマン:ホームカミング、41.ベイビー・ドライバー、42.エル ELLE、43.三度目の殺人、44.オン・ザ・ミルキー・ロード、45.ドリーム、46.ブレードランナー 2049、47.パターソン、48.IT イット “それ”が見えたら、終わり、49.彼女がその名を知らない鳥たち、50.gifted/ギフテッド、51.否定と肯定52.スター・ウォーズ 最後のジェダイ53.花筐

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2017年09月06日

ベイビー・ドライバー

T0022115p.jpg 英題:BABY DRIVER
 製作年:2017年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年8月19日
 上映時間:1時間53分
 配給・製作会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
 監督・脚本:エドガー・ライト
 製作:ニラ・バーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
 撮影:ビル・ポープ
音楽:スティーブン・プライス
キャスト:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ
エイザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス
ストーリー:『幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧なプレイリストをセットしたiPodで音楽を聴くことで驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍するが、デボラ(リリー・ジェームズ)という女性と恋に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る。シネマトゥデイより』

『町山さん大推薦』
町山智浩 映画『ベイビー・ドライバー』を語る TBSラジオ『たまむすび』より

町山さんの『ミュージカルなんですよ。これね、すごいのがちゃんとそのシーンのコレオグラフ(振り付け)をプロのコレオグラファーにたのんでいて。この映画、全てのシーンがずーっとリズムを刻むような動きをしているという画期的な映画なんですよ。』との紹介を聞いて、

そしてこのカーチェイスの映像を見て、
映画『ベイビー・ドライバー』冒頭6分カーチェイス YouTubeより

公開初日に見に行きました。そしてぶっ飛びました。
音楽と映像のこのシンクロ感!しかもこれが編集ではなくて、ひたすらリハーサルを繰り返し、テイクを重ねて作り上げたドライブ感なんだという事実。さらに言いたいのは、エドガー・ライト監督がこの作品にハリウッド作品へのたくさんのオマージュを込めつつ、ノーテンキなハリウッド映画への批判精神も失わないというその姿勢。『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』も良かったけれど、この作品も最高でした。

『カーチェイス映画について』
町山さんの解説で面白かったのは、イギリスではカーチェイス映画が撮れないというお話。確かにイギリスは交差点がロータリーになっているので道路がスピードが出せない構造になっていますね。

だから、
『どうしてもカーチェイス映画を作りたいから、アメリカで作るしかないということで。その頃からずーっとカーチェイス映画の企画を練っていて。この『ベイビー・ドライバー』っていうのはだから1995年に最初に彼、考えて。そこからずーっと、「アメリカでカーチェイス映画を作る、作る!」って思ってとうとう作れた映画』なんだということ。そんなライト監督に執念とオタク精神に最大限の賛辞を贈りたいと思います。

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2017年05月18日

マンチェスター・バイ・ザ・シー

T0021664q.jpg 英題:MANCHESTER BY THE SEA
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年5月13日
 上映時間:2時間17分
 配給:ビターズ・エンド / パルコ
 製作会社:K Period Media、Pearl Street Films他
 監督・脚本:ケネス・ロナーガン
 プロデューサー:ローレン・ベック、マット・デイモン他
キャスト:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ
ストーリー:『ボストン郊外で便利屋をしている孤独な男リー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョー(カイル・チャンドラー)の急死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる。兄の死を悲しむ暇もなく、遺言で16歳になるおいのパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人を引き受けた彼は、おいの面倒を見るため故郷の町に留まるうちに、自身が心を閉ざすことになった過去の悲劇と向き合うことになり……。シネマトゥデイより』

『傑作!?』
この作品、昨年の11月に町山智浩さんがTBSラジオ「たまむすび」で紹介していました。
町山智浩 映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を語る 「miyearnZZ Labo」より

町山さんは紹介の中で、
『この映画はものすごい地味なんで、まだ日本公開が決まっていないんですけども。
 たぶんこれはアカデミー賞主演男優賞を行くだろう』
 と予測!

予測通り作品は、本年度のアカデミー賞で主演男優賞を獲得、さらに脚本賞にも輝きました。
しかし、町山さんから地味だと称されたこの作品の配給を担当するのはビターズ・エンド。地味だけど良質な作品を配給する会社として有名ですが、なまじこの作品がアカデミー賞を2つも取ってしまったから、こんなポスターを作成したのでしょうね。

T0021664p (1).jpg

自ら”傑作”って書くか!?
まあ、そう思ってしまいますが、”とにかく見て欲しい!”
そんな思いであったのだろうと、この作品見て思いました。

引用したシネマトゥデイの映画紹介記事に清水節さんの映画評論が掲載されていますが”数年に1本の傑作”という表現に偽りはありませんでした。

『とにかく見て欲しい』
この作品、町山さんが言われているように”非常に説明のしにくい映画”です。もちろんネタバレしてもミステリー作品ではないので、それが致命的なミスになることはありませんが、「映画を見ることは、約2時間のあいだ、別の人生を生きてみること」であると私は思っていますので、主人公のリー(ケイシー・アフレック)がどうして心を閉じてしまったのかは、映画の進行と一緒に体験したほうが良いのだと考えます。ですから、とにかくこの映画を見てほしいとだけ書くことにします。

主人公のリーは、人生には、乗り越えられることと、どうしても乗り越えられないことがあることを理解するに至りますが、それに至る道筋は辛いものです。さらに耐え難いことが主人公の身には起こります。その過程を主人公と一緒に体験させてくれる映画でした。

蛇足ですが、主人公を演じたケイシー・アフレックの演技、本当に素晴らしいものでした。それから元妻を演じたミシェル・ウィリアムズも本当に素晴らしい。それから、二人の間にどんなことがあったのか?それだけで一本映画が作れそうな内容なのに、それをそうするの?って思わせてくれたケネス・ロナーガンも素晴らしい。以上です。


『参考』
映画の公式ホームページに高橋源一郎さんの映画評が掲載されています。
5月10日(水)朝日新聞に掲載された文章だそうですが、是非読んでみてください。
越えられない痛みからの再生孤独な心に寄り添う傑作  高橋源一郎

もう一つ、前掲の町山さんの紹介記事
町山智浩 映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を語る 「miyearnZZ Labo」より

マット・デイモンがどうしてケイシー・アフレックにこの映画の主演を譲ったのか?
それが知りたい人は町山さんの解説を是非読んでみてください。

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2017年05月06日

まるでいつもの夜みたいに

T0021859p.jpg 製作年:2017年
 日本公開:2017年4月29日
 上映時間:1時間14分
 配給協力:アップリンク / TONE
 製作・配給:スコブル工房
 監督・撮影・編集:代島治彦
 語り:田川律
 題字・絵:南椌椌
 ピアニカ演奏:ロケット・マツ
キャスト:高田渡、中川イサト、中川五郎
ストーリー:『1960年代から活躍するフォークシンガー高田渡が、死を迎える20日前の2005年3月27日、東京・高円寺の居酒屋でライブを行った。カメラは、住まいのある三鷹から高円寺へ向かうところから高田を追う。そして、50平米ほどの即席の会場でギター1本を手にした高田は、「仕事さがし」に始まり、軽妙なトークを交えながら、次々と楽曲を披露していく。シネマトゥデイより』

『東京最後のライブ映像』
シネマトゥデイの紹介にあるように、北海道ツアー中に倒れる2005年4月3日からわずか6日前に高円寺の居酒屋で収録されたライブ映像がほとんどそのまま映画になっています。びっくりするのは、もうその時から12年も経っているということ。確かに、渡さんはその時亡くなられたけれど、いまだに日本のどこかで渡さんは歌いながら旅していると思うことをやめられない、そんな自分がいます。

この映画に収録されているのはこの14曲

『仕事探し』
作詞・曲 高田 渡

『失業手当』
詩 ラングストン・ヒューズ
訳 木島 始 曲 高田 渡

『アイスクリーム』
詩 衣巻省二 曲 高田 渡

『69 シックスナイン』
詩 金子光晴 曲 高田 渡

『鎮静剤』
詩 マリー・ローランサン
訳詩 堀内大学 曲 高田 渡

『ごあいさつ』
詩 谷川俊太郎 曲 高田 渡

『コーヒーブルース』
詩・曲 高田渡 編曲 早川義夫

『銭がなけりゃ』
作詞・曲 高田 渡

『しらみの旅』
詩 添田唖蝉坊 原曲 A.P.カーター

『トンネルの唄』
詩・曲 朝比奈逸人

『ひまわり』
詩 バーナード・フォレスト
訳 中島 完 曲 高田 渡

『ブラザー軒』
 詩 菅原克己 曲 高田 渡

『風』
詩 朝倉 勇 イギリス民謡

『夕暮れ』
詩 黒田三郎 作詞・曲 高田 渡

ライブの最後に歌う歌は『生活の柄』に決まっているのに、このライブではもう飽きたのでと『夕暮れ』をうたうのだけど、この歌がまた良いよなあ。

  夕暮れの街で
  僕は見る
  自分の場所からはみ出てしまった
  多くのひとびとを


ライブの中で、自らの死に触れるシーンがいくつかあるのだけど、まあそれはいつものギャグだと流せることが出来るけれど、この『自分の場所からはみ出てしまった』人についての歌は切なすぎて、切なすぎて。

でも、映画のタイトルのように『まるでいつもの夜みたいに』そこにいる渡さん。
やはり、渡さんは今日も日本のどこかで焼酎を飲みながら歌っているんだと思う。
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2017年04月27日

T2 トレインスポッティング

T0021717p.jpg 英題:T2 TRAINSPOTTING
 製作年:2017年
 製作国:イギリス
 日本公開:2017年4月8日
 上映時間:1時間57分
 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
 製作会社:A DNA FILMS / DECIBEL FILMS / CLOUD EIGHT FILMS
 監督:ダニー・ボイル
 撮影監督:アンソニー・ドッド・マントル
脚本:ジョン・ホッジ
キャスト:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー
ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤコバ
ストーリー:『シかつてレントン(ユアン・マクレガー)は、麻薬の売買でつかんだ大金を仲間たちと山分けせずに逃亡した。彼が20年ぶりに故郷スコットランドのエディンバラの実家に戻ってみるとすでに母親は亡くなっており、父親だけが暮らしていた。そして悪友たちのその後が気になったレントンが、ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)のアパートを訪ねると……。ネマトゥデイより』

『WOWOW』
前作『トレインスポッティング』の評判は聞いていましたが、ジャンキーの話ですし、あまり気乗りのしませんでしたが、町山智浩さんが『たまむすび』で紹介していたのを聴いて、では観てみようかと。
【町山智浩】 『T2トレインスポッティング』を町山智浩が解説 YouTubeより

今作品は前作の20年後の話だけど、やはり一応続編だから『トレインスポッティング』を先ずは観るかなと、『WOWOW』の映画欄をチェックしたら来月の5日に放映とありました。なので待てばよいのですが、この作品4月8日に公開ですので、ゴールデンウィークまで公開が続いているかがちょっと微妙。ですので、前作はあとで観ることにして丸の内ピカデリーに行ってきました。

『戻ってきた仲間たち』
前作『トレインスポッティング』は監督にとっても俳優にとってもまさに出世作でした。ダニー・ボイル監督はこの作品で名を挙げ、2008年制作の『スラムドッグ$ミリオネア』ではアカデミー賞作品賞・監督賞他を受賞。主演のユアン・マクレガーの活躍は言うに及ばず、ユエン・ブレムナーもジョニー・リー・ミラーもロバート・カーライルもみんなもう大活躍です。

では、何故、続編の制作が20年後だったのか?その理由は「MovieWalker」の記事にあります。
ダニー・ボイル監督が過去にユアン・マクレガーにひどい仕打ちをしたことを謝罪
監督と主演の仲違いに、デカプーちゃんが関係したとは思いませんでした。しかしこの20年という続編の公開までの年月は、脚本で本当に上手く活かされています。

20年前金を持ち逃げして、新しい世界に旅立ったレントン(ユアン・マクレガー)は、アムステルダムで会計の仕事をしていましたが、結婚にも失敗し、おまけにジムでランニング中に心臓発作。一命をとりとめたレントンは故郷に戻ることを決心します。

実家に戻ると老いた父親が彼を迎えますが、母はすでに亡くなっており、母親が息子がいつかえってきても良いように昔を同じままにしてくれていた部屋だけが彼を待っています。故郷に戻っても行き場のないレントンは、昔の仲間の元へ。20年前仲間と一緒に稼いだ鐘を持ち逃げしたレントンでしたが、実は彼が逃げ出すのを見逃してくれていた心優しいジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)の元を訪れると、レントンからの分前(あぶく銭)でさらに麻薬に溺れてしまったスパッドは、何回も麻薬を断とうとしますが果たせず、失意のもとに自殺をしようとしていました。

何とか自殺を止めたレントンは次にサイモン(ジョニー・リー・ミラー)に会いに行きます。レントンとサイモンは和やかに話し始めますが、金を持ち逃げされたことを恨んでいるサイモンはすぐにレントンと殴り合いの喧嘩に。しかし、親友同士であった二人はそのうちにお互いの置かれた惨めな状況を理解し、また悪事を企むことになる。

さて、もう一人の登場人物ベグビー(ロバート・カーライル)は殺人罪で服役中。弁護士に仮釈放を申請するも上手く行かず、一計を案じて見事に脱獄に成功、彼も故郷に戻ってきます。ということで、また前作の4人が揃いますが、さて彼らはどうなっていくのか???というのが『T2 トレインスポッティング』の出だしです。

あれから20年!レントン・サイモン・スパッド・ベグビーはみんな中年です。故郷スコットランドのエジンバラも、20年前の大不況をユーロ統合により救われ、失業者で溢れていた汚い町並みもすっかり綺麗になっています。だがしかし、彼ら4人はまったくその恩恵を受けるに至らず、しかも『明日のことなんか関係ないのだ、今この時間をドラッグで決めて楽しくやれば良いんだ』なんて無軌道なエネルギーはもう無い。それぞれに、なにがしかの係累を持っていて、この先どうして生きていけばよいのかを考えざるを得ない年齢になっています。つまり『中年の危機』ってやつに悩まされるわけです。

私はもう老年ですので、その時期はとっくに通り過ぎていますが、この映画を観て、色々と思うことはありました。個人的には、スパッドの描かれ方に一番ぐっと来ましたが、映画を観る人それぞれにいろんな思い入れを感じることだと思います。ダニー・ボイル監督ですので、サウンドトラックはいつものように素晴らしい!そして、撮影監督のアンソニー・ドッド・マントルの仕事も素晴らしいの一言。若い人も中年の人も老年の人も是非ご覧になってみてください。お勧めいたします。

『イギー・ポップ』
最後にこの曲を歌っているイギー・ポップのこと。
Iggy Pop - Lust For Life  YouTubeより

軽快でとってもポップで良い曲ですが、イギー・ポップといえば、山崎ハコファンの私としては最近とても身近な存在です。というのはイギー・ポップがBBCで担当しているラジオ番組において、山崎ハコさんの曲『ヘルプ・ミー』と『望郷』を2日にわたってかけたという情報が、イギリスのハコファンからもたらされたからです。

この情報を調べてみると、
http://www.bbc.co.uk/programmes/b08kgntw
http://www.bbc.co.uk/programmes/b08hzq7m?ns_mchannel=social


確かに、Hako Yamasaki Help Me (Tsunawatari)  
    Hako Yamasaki Nostalgia
 かけてます!

だから何だと言われたらそれまでなんですが、そして映画とは全く関係のない話ですが、イギーと関係がある話なので書いてみました。蛇足でした。


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2017年04月18日

人生タクシー

T0021736p.jpg 英題:TAXI
 製作年:2015年
 製作国:イラン
 日本公開:2017年4月15日
 上映時間:1時間22分
 配給:シンカ
 提供:東宝東和
 監督:ジャファル・パナヒ
 キャスト:ジャファル・パナヒ
見どころ:『カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界三大映画祭での受賞経験を持つ名匠ジャファル・パナヒ監督によるユニークな人生賛歌。イラン政府への反体制的な行動によって、映画制作を禁じられたパナヒ監督自らタクシーの運転手にふんし、車内に設置したカメラで客たちの様子を撮影。監督と乗客の会話を通じ、情報が統制されているテヘランに暮らす人々の人生模様を映し出し、第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。シネマトゥデイより』

『イラン映画』
イラン映画はほとんど観たことがありません。巨匠キアロスタミ監督の映画は『トスカーナの贋作』だけですし、ファルハディ監督も『別離』『彼女が消えた浜辺』のみ。そして恥ずかしながら、今作品の監督ジャファル・パナヒさんについてはまったく知りませんでした。

この映画は文化放送大竹まことゴールデンラジオ!に出演したいとうせいこうさんの紹介です。
いとうせいこう×光浦靖子×大竹まこと「映画『人生タクシー』」2017.03.23
いとうせいこうさん、番組ではいろんなものを紹介してくださっています。先日ブログにアップした『ムーンライト』もいとうせいこうさんの紹介でした。

『フェイクドキュメンタリー』
映画終了後、森達也監督と松江哲明監督のトークイベントがありました。
森達也監督と松江哲明監督が語る制約がある面白さ『人生タクシー』公開初日イベント

パナヒ監督は、政府への反体制的な活動を理由に2010年より“20年間の映画監督禁止令”を受けていますので、この作品も映画ではなくタクシーの車内映像記録であるという体になっています。ですから、当然での外国での映画公開イベントに出席なんてことは夢のまた夢。

代理(?)として出席のお二人の監督は『人生タクシー』にインスパイアされて制作した短編映画上映の後、本作の魅力を語られました。森監督の『映画を撮ることを禁じられた映画監督の映画のような映像』の絶妙な居心地悪さ、松江監督の『ちいさな宝物 Ein Kleiner Schatz』の場違い感、それぞれに楽しめましたが、面白かったのはやはりトークセッション。

松江監督の、
『この映画は見る人によってはドキュメンタリーに見えます。
 枷があるからこそドキュメンタリーよりドキュメンタリーになっていますよね。
 枷を作ることで自由が見えてくる。そういう映画好きなんですよ。』


森監督の、
『多少は制約あった方がドキュメンタリーとかは面白くなる。
 中国とか、ミヤンマーとか・・・。さすがに北朝鮮はね、撮れないけれど。
 ・・・これから日本ドキュメンタリー面白くなると思いますよ。』


特に、森監督の『これから日本ドキュメンタリー面白くなると思いますよ』には大爆笑してしまいました。森監督の発言、かなりブラックですが、こういうユーモアが大事でしょう!『人生タクシー』もパナヒ監督を取り巻く状況はかなり深刻ですが、そんな中で映画製作を諦めない姿勢が凄いし、決してユーモアも忘れていない。

公式サイトに監督のメッセージが掲載されています。
是非読んでみてください。TOPページの一番下の部分に掲載されています。
http://jinsei-taxi.jp/

『どんなふうにして撮ったのだろう??』
パナヒ監督はタクシー運転手に扮してセットしたハディカムを時々動かすのみ。
客に扮した俳優さんがタクシーに乗っては降りていく。

普通に考えればかなりピントが合ってなかったりブレの多い映像になってしまうと思いますし、ハプニングの多いストーリーになってしまうと思うのですが、映像はすこぶる鮮明で、客として乗ってくる姪のハンディビデオの映像なんかも素材として使って、編集の上手さもあると思いますが、素晴らしい映画になっています。しかも上品がユーモアが漂う映画に!

パナヒ監督はタクシーを運転しているだけに見えますが、その陰で時間調整や交通整理や見張り(!?)などを行っているスタッフの努力があるのでしょう。イラン映画を支える映画人の気骨も見事です。他のパナヒ監督作品俄然観たくなりました。

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2017年04月17日

ムーンライト

T0021623p.jpg 英題:MOONLIGHT
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年3月31日
 上映時間:1時間51分
 配給:監督・脚本:バリー・ジェンキンズ
 脚本:タレル・アルヴィン・マクレイニー
 エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピットファントム・フィルム
 キャスト:マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、ジャネール・モネイ
アレックス・ヒバート、アッシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズ      

『三人のシャロン』
マイアミの貧困地域で暮らすアフリカ系アメリカ人のシャロンが人生の居場所を求めて彷徨う姿を、幼少期・少年期・青年期の三つのステージで描き出した作品です。三つのステージは、別々のまったく容姿に共通点のない俳優によって演じられていますが、何故か違和感を感じません。どうしてかなあと思っていたのですが、公式サイトを見て納得しました。
http://moonlight-movie.jp/

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ポスター3人の顔の合成写真だったのですね!
ムーンライト33.jpg

『ストーリー』
最初のステージ”リトル”のシャロンを演じるのはアレックス・ヒバート
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『月明かりで、おまえはブルーに輝く』

スラム街で母親と暮らすシャロン。小さくてナヨナヨしているため学校でも近所でも悪ガキたちいじめられているが、売春で生計をたてている母は客が来ると彼を家から追い出すのでシャロンには居場所がない。ある日ガキ達に追いかけられ廃屋に逃げ込んだシャロンは、ファン(マハーシャラ・アリ)に助けられるが、怯えているシャロンは何も話そうとしない。

ファンはシャロンを家に連れ帰り、恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)に食事を作らせ食べさせる。シャロンは少しずつ心を開くようになり、ファンはシャロンに『自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな。』とやさしく語りかける。

その後、シャロンは時々ファンの家に行くようになり、テレサの手料理を食べたり、家に泊めてもらうようになるが、ある日シャロンはファンが麻薬の売人であることを知り、母親が手を出している薬物もファンから買っていることを知って・・・・。

ファンは故郷のキューバで大人たちから『黒人は月明かりの中でブルーに輝き、とても美しい存在なのだ』と教えられ、そのことをシャロンに泳ぎを教えている時に伝えます。ファンは麻薬の売人であり、ファンの母親にも薬を売っていますが、同時にどこにも居場所のないシャロンのことを純粋に心配し助けてやりたいとも思っています。映画は、淡々とその両方を簡潔に描き出しています。

次のステージのシャロンを演じるのはアッシュトン・サンダース
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『泣きすぎて、自分が水滴になったようだ』

シャロンは相変わらずテレサの家に通っていますが、ファンがもうこの世にいません。母親の薬物中毒はますますひどくなり、シャロンにテレサにお金貰ってるんだろうとたかるようになっています。シャロンは相変わらず学校でいじめを受けていますが、幼い頃からの唯一の友達であるケヴィンが心の支えになっています。

シャロンをいじめている奴らはケヴィンの腕っ節が強いことに目をつけ、ケヴィンにシャロンを殴るように仕向けます。ケヴィンはやむなくシャロンを殴りますが、殴られても起き上がろうとするシャロンに頼むから立たないでくれといいますが、シャロンは立ち上がります・・。

その夜、親友に殴られてショックを受けたシャロンは夜の浜辺で過ごそうとするのですが、そこにケヴィンがやってきて、お互いに傷つけあった二人は初めて、互いが惹かれ合っていることを気づきます。そしてその翌日、シャロンはある行動に出ます。

父親代わりだったファンがこの世を去り、自分を守ってくれる存在がなくなったシャロン。自分は、黒人であり、貧弱な身体しか持ちあえず、しかも自分が性的にマイノリティであることに苦しんでいます。いじめられ、自分が水滴になってように思えるほど泣いたシャロンが取った行動とは?

最後のステージのシャロンを演じるのはトレヴァンテ・ローズです。
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『あの夜のことを、今でもずっと、覚えている』

大人になったシャロン、見違えるようなマッチョな身体に自分を鍛え上げていますが、生業は麻薬の売人をやっっています。そんな彼にケヴィンから連絡が入ります。ケヴィンは料理人となりレストランで働いていますが、そこのジュークボックスでかかった曲を聴いてシャロンを思い出したので連絡してきたとのこと。

シャロンはケヴィンからの連絡に動揺しますが、結局会いに出かけます・・・。

『アリとマクレニーとジェンキンス』
アカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリはファンの役を演じましたが、彼が登場するのは最初のステージのみです。小さなシャロンの父親代わりの役ですが、同時にシャロンの母に麻薬を売っています。とても複雑な役なので、その矛盾に葛藤するのが普通の映画の作法だと思うのですが、彼はその全てを受けて入れて、それでも小さなシャロンを守ることに躊躇しない人間として存在しています。この器の大きさはマハーシャラ・アリという俳優があってこそ表現することが出来たのではと思います。これから、いろんな作品に引っ張りだこになる俳優さんだと思います。

本作の原案を考え、映画の脚本も担当したタレル・アルバン・マクレイニー、そしてマクレニーと一緒に脚本を書き、映画の監督も担当したバリー・ジェンキンズは、アカデミー脚色賞と作品賞を受賞しました。二人は映画の舞台となったマイアミのリバティ・シティ公営住宅で育ち、ともに麻薬中毒の母親に育てられ、学年は違うものの同じ小学校と中学校に通い、それぞれに才能を見出してくれる人に恵まれて、奨学金を得て大学に進みました。

麻薬の売人や売春でしか生活していけない境遇が現実に存在しているけれど、地獄のような境遇においても助けようと手を差し伸べ、背中を押してくれる人が存在する。ファンの『自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな。』という言葉は、タレル・アルバン・マクレイニーとバリー・ジェンキンズが誰かから学び、心にずっととどめていた言葉なのでしょう。とても当たり前のことを言っているだけですが、重みがあります。

『カラーリスト』
シネマトゥデイにこんな記事がありました。
アカデミー賞作品賞『ムーンライト』かつてない色彩美はこうして生まれた!

この映画の素晴らしい映像は、撮影後にカラー処理をされているからなんですね。このことは町山さんがたまむすびでも語っておられました。

町山智浩 映画『ムーンライト』を語る miyearnZZ Laboさんの書き起こしより

アレックス・ビッケルさんという方が色彩加工をされているんですね。町山さんは、『こんなに加工しちゃうっていうことはもう何も信じられないっていうことですね。』と語っておられますが、この映像加工があったからこそ、こんなにも悲惨なストーリーな『ムーンライト』が純愛を描いた美しい作品として心に残るのだとも思えます。



posted by たくカジ!!CINEMA at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年04月13日

LION/ライオン 〜25年目のただいま〜

T0021637p.jpg 英題:LION 
 製作年:2016年
 製作国:オーストラリア
 日本公開:2017年4月7日
 上映時間:1時間59分
 配給:ギャガ
 監督:ガース・デイヴィス
 キャスト:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム
      ニコール・キッドマン、サニー・パワー、アビシェーク・バラト

『勘違い』
予告編を何回も何回も観て(観せられて)きましたので、映画のシークエンスをある程度想像していましたが、予想は見事に外れてしまいました。

普通に考えれば、主人公役のデブ・パテルが自分の迷子になった場所へ「Google Earth」を駆使しながら少しずつ近づいていくが、主人公が記憶の断片をジグソーパズルのように一枚一枚当てはめていく過程で、主人公が迷子になった5歳の再現映像がサニー・パワーによって演じられ記憶を呼び起こす。そんな流れになると思っていましたが、これが全くの勘違い!原作を読んでいませんので、原作通りのストーリー展開なのかは不明ですが、主人公が迷子になって、オーストラリア人の夫婦に引き取られるまでをしっかりと描き出すのです。

『ストーリー』
さて、デリー北東にあるジャイプール近くの小さな町が主人公サルーの生まれ故郷です。サルーは母と兄そして幼い妹たちと暮らしていますが、貧しい家計を助けるため、兄と一緒に近くのカンダワ駅で仕事を探すことに。しかし幼いサルーですから夜もふけて眠くなり兄と行動をともに出来なくなり、兄から仕事を探してくるからホームで自分が戻ってくるのを待ってろと言われます。ホームのベンチで寝ていたサルーがしばらくして目を覚ますと、ホームには回送電車が着いており、サルーはいつものように電車の中で落ちている小銭を探し始めますが、探しているうちになんと回送列車は動き出し、そこから1,600km離れたコルカタまでサルー連れて行ってしまいます。

大都会において一人ぼっちとなった主人公は駅で必死に故郷に帰りたいと訴えますが自分の生まれた街の名前をうろ覚えな5才児です、結局浮浪児となりコルカタの街を彷徨うことになり、小児奴隷として売り払われる危機にも直面しますが、何とか危機を乗り越え、孤児院に収容され、幸いなことにオーストラリア人の夫婦に引き取られることになるのです。

映画の制作陣は、先ずは5歳の時の主人公を演じることが出来る子役を何千人ものオーディションで見つけ出します。それが5歳のサルーを演じたサニー・パワーですが、カメラは彼の目線で、迷子になったシーン、コルコタの駅の雑踏でもみくちゃになるシーン、浮浪児として街を彷徨うシーン、孤児院で過ごすシーンを見事に映像化します。そして5歳のサルー役を演じたサニー・パワー君素晴らしいです。表情の変化だけで色んなことを表現してみせてくれます。彼をオーディションで見つけ出した制作陣の慧眼に拍手です。

それにしても、なにもここまで忠実に再現しなくてもと、インドのことなんか何にも知らない私でも思ってしまうほどの映像なのですが、もし最初にこの展開がなくて、成人となった主人公役のデブ・パテルが自分の迷子になった場所へ「Google Earth」を駆使しながら少しずつ近づいていくことだけの映画だったら、きっと底の浅いものになってしまったであろうと思いますから、やはりこれが王道で正解なのでしょうね。

『故郷にたどり着くまで』
さて、幼いサルーがオーストラリア人の夫婦に引き取られ、教育を受け、立派に成人しますが、ある日友人の家のパーティーに招かれたおりに、その家で幼いころに目にしていたインドのお菓子を目にします。プルースト効果なのでしょうか、サルーは突然自分がどうしてオーストラリアに引き取られたのかを思い出し、兄と母が今でも自分のことを探しているのだと思うと居ても立ってもおられなくなり、幼いころの記憶を頼りに故郷を探し始めるのです。さて、サルーはどのようにして、故郷にたどり着くのでしょう??

ということでこの先はネタバレになりますので、書くことが出来ませんが、自分を育ててくれた養父母への感謝の気持ちと、きっとずっと自分を探してくれているはずの母と兄への思いに引き裂かれてしますサルーに対して、ニコール・キッドマン演じる養母スーが語る言葉が、もうあまりにも感動的で涙腺決壊でした。

もちろん、映画のタイトルにもあるように、主人公サルーは実母に”25年目のただいま”を言うのですが、この映画の感動の多くはサルーを養子として迎え入れてくれた養父母の無償の愛に対してのものでした。映画のエンドロールで、実母カムラさんと養母スーさんが実際に出会うシーンが映されますが、公式サイトによれば、デイヴィス監督は撮影にあたり、サルーが歩んだ道を実際に出来る限り辿ることに努め、サルーの産みの親カムラと育ての親スーが初めて会った瞬間にも立ち会ったとのこと。これは、映画化してことでも幸せな副産物ですね。映画が終わってもすぐに席を立たずに、ぜひこの映像もご覧になってください。

posted by たくカジ!!CINEMA at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年03月23日

たかが世界の終わり

T0021517p.jpg 英題:IT'S ONLY THE END OF THE WORLD
 製作年:2016年
 製作国:カナダ/フランス
 日本公開:2017年2月11日
 上映時間:1時間39分
 配給・提供:ギャガ
 提供:ピクチャーズデプト / ポニーキャニオン / WOWOW / 鈍牛倶楽部
 監督・脚本・編集:グザヴィエ・ドラン
 原作:ジャン=リュック・ラガルス
撮影:アンドレ・トュルパン
音楽:ガブリエル・ヤレド
美術:コロンブ・ラビ
キャスト:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール
     ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ

『今度は家族』
一昨年公開の『Mommy/マミー』ですでにドラン監督には一度ノックアウトされています。
発達障害を持つ息子を主人公に据えて、人はどこまで自己犠牲できるのかを描き出した映画だと思うのですが、自己犠牲というテーマをただのヒューマンドラマに落とし込まず、母と息子という閉ざされた関係性に隣人を一人持ち込むことで、テーマをさらに普遍的なレベルまで高めて描き出した技量に、ただただ感心したものです。母親・息子・隣人、それぞれが全力を尽くし、その先にかすかに視えてくる希望。グザヴィエ・ドラン監督の作品は初めてでしたが、2015年に観た映画の中で一番心に刺さった映画でした。

そして今作、母の存在と父の不在という設定は変わりませんが、今度は母と息子だけが中心ではなく、そこに兄と妹、それから他者として兄の嫁が加わりました。つまり、家族の物語なのです。

余命僅かなことを知った主人公が、12年ぶりに帰郷し、家族と再会し、戻っていく迄のストーリー。

しかし、主人公がどうして12年も家に帰らなかったのか?
    12年前にどうして家を出つことになったのか?
    主人公はどんな病に犯されているのか? それらは全て説明されず、
    帰省し、家族との会い、またパリに戻っていきます。

主人公で、12年前に家を出て、その後劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りします。母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物を食卓に並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もルイとの再開を心待ちにしています。しかし、兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)は何故か不機嫌そうで、いつものことなのか母と言い争っており、其の様子を兄の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)は心配そうに見つめている。

母マルティーヌと妹シュザンヌは主人公ルイがの帰省を喜んでいるが、母は小さかった頃のルイを懐かしむばかりで、昔話ばかりを繰り返し、妹は劇作家として成功した有名人という目でしか兄を捉えることが出来ない。兄アントワーヌは何故か家に戻ってきたルイへの苛立ちを隠さず、弟へ厳しい言葉を投げつけては母と諍いを繰り返す。12年ぶりに再開したはずなのに、会話は上滑りし、コミュニケーションが成り立たない。

そんな家族の姿を、グザヴィエ・ドランは極端に顔のアップを多用する映像で描き出します。スクリーンには俳優たちの顔が画面全体に映し出され、観客は上滑りし内容のない会話ではなく、俳優たちの顔の表情の変化で、登場人物の心の細かな動きを感じ取る。ドラン監督は映画ごとに様々な手法に挑戦するタイプの監督で、『Mommy/マミー』で主人公が手で画面をこじ開けるシーンには驚愕しましたが、今回の作品での画面全体を顔のアップで埋め尽くす手法にも本当に驚愕しました。

主人公のルイを演じたギャスパー・ウリエルも、
『今回のような至近距離での撮影では、呼吸、まばたきのひとつひとつをカメラが
 捉えてくれるという感覚が素晴らしかった。』
映画の公式サイトより
とインタビューで答えていますので、俳優にとっても素晴らしい経験であったようです。

もう一つ兄を演じたヴァンサン・カッセルはドラン監督のことを、
『自分に嘘をつかない男だ。そこには彼独特のスタイルがあって、僕らには理解不能な何かがある。彼ならではのカメラの動かし方、ストーリーの語り方、感情の引き出し方があるんだ。ロジックは存在しない。次第に形になり、周囲にはその仕上がり像が曖昧だったのに、完成した瞬間、打ちのめされるんだ。』 と答えています。

カッセルは俳優ですからアントワーヌのような嫌な役どころを演じることに何のためらいないし、喜んであの役を演じていたのだろうけれど、作品が出来上がり試写を観て、兄の弟への愛がこんなにも描き出されていることにびっくりしたのでしょう。

公式サイトによれば、この作品を創るきっかけは『Mommy/マミー』を出品したカンヌ国際映画祭で、ドラン監督がマリオン・コティヤールに出会い、彼女と一緒に仕事がしたいと思ったことだそうですが、出演したコティヤールのあの”気配の消し方”は本当に凄い!彼女も凄いし監督も凄い。しかも気配が消えているのに、映画を見終わると彼女のことが一番心に残っている!

やはりグザヴィエ・ドランは天才なんだ!
本当にそう思えた映画でした。
是非是非、グザヴィエ・ドランを経験ください。全力でお勧めします。



posted by たくカジ!!CINEMA at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年03月05日

ラ・ラ・ランド

T0021440p.jpg 英題:LA LA LAND
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年2月24日
 上映時間:2時間8分
 配給・提供:ギャガ / ポニーキャニオン
 製作会社:Summit Entertainment
 監督・脚本:デイミアン・チャゼル
 キャスト:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス
ストーリー:『ストーリー:何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。シネマトゥデイより』

『シネマスコープ!』
前評判が最高で、しかも主演が大好きなライアン・ゴズリングとエマ・ストーン。期待するなという方が難しい話で、封切り日が待ち遠しい毎日でした。どこの映画館でみるかも考えました。IMAXとかTCXという選択もありましたが、先ずは普通の映画館で見ることとし、同年代の映画ファンが多そうな日比谷シャンテを選択。いそいそと出かけたのではありました。

映画が始まるとシネマスコープサイズの画面が現れ(公式サイトによれば、『シネマスコープのフィルムは現在では2.4対1の比で撮られるが、本作は特別な雰囲気を加えるために昔の映画のように2.25対1で撮られた』とのことだそうだ!)、ロスの高速道路でのフラッシュモブ映像に。テンポの良い音楽とキレッキレの群舞!ヴィンセント・ミネリの『巴里のアメリカ人』や『バンド・ワゴン』を彷彿とするシーンに凄いミュージカル映画が始まるんだと期待は更に膨らんだのです。

しかしながら・・・・・。

威勢が良かったのはここまでで、あとはおとなしいダンスと唄、落ち着いたダンスと唄の連続。いわゆる『ミュージカル臭』を出さないように配慮した結果が、ヒットに繋がったのだと思いますが、ダンスもハイウェイシーン以外は小粋(?)なダンスの連続ですし、唄についてもドラマとのギャップを避けるためもあるのでしょうが歌い上げることは無い!

この作品は瀕死の状態であった(あるいはもう死んでいた)ミュージカル映画と称されているようですが、個人的には『もうミュージカル臭が凄いんじゃ!』というミュージカルをとてもとても愛していますので、これでは物足りない。フレッド・アステアやジーン・ケリーに匹敵するダンスがなくても良いけれど、少なくともダンスや歌でもっと陶酔させてくれよと思えてしまう・・・・。

そんなわけで、期待しすぎだったのこともあるのですが、少しながら残念な気持ちで劇場を後にしました。それにしてもジョン・レジェンド。あのバンド、ジャズと縁もゆかりもない音楽をやっていましたね。本当にチャゼル監督が救いたいジャズって、どんなジャズなんだろうとしばらく考え込んでしまいました。別にジャズはチャゼル監督が救わなくても生きているし、ジャズを志す若者もいる。

『ジャズを救う!』チャゼル監督のそんな上から目線が私には気に入らないのかもしれません。

posted by たくカジ!!CINEMA at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画