2017年04月27日

T2 トレインスポッティング

T0021717p.jpg 英題:T2 TRAINSPOTTING
 製作年:2017年
 製作国:イギリス
 日本公開:2017年4月8日
 上映時間:1時間57分
 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
 製作会社:A DNA FILMS / DECIBEL FILMS / CLOUD EIGHT FILMS
 監督:ダニー・ボイル
 撮影監督:アンソニー・ドッド・マントル
脚本:ジョン・ホッジ
キャスト:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー
ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤコバ
ストーリー:『シかつてレントン(ユアン・マクレガー)は、麻薬の売買でつかんだ大金を仲間たちと山分けせずに逃亡した。彼が20年ぶりに故郷スコットランドのエディンバラの実家に戻ってみるとすでに母親は亡くなっており、父親だけが暮らしていた。そして悪友たちのその後が気になったレントンが、ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)のアパートを訪ねると……。ネマトゥデイより』

『WOWOW』
前作『トレインスポッティング』の評判は聞いていましたが、ジャンキーの話ですし、あまり気乗りのしませんでしたが、町山智浩さんが『たまむすび』で紹介していたのを聴いて、では観てみようかと。
【町山智浩】 『T2トレインスポッティング』を町山智浩が解説 YouTubeより

今作品は前作の20年後の話だけど、やはり一応続編だから『トレインスポッティング』を先ずは観るかなと、『WOWOW』の映画欄をチェックしたら来月の5日に放映とありました。なので待てばよいのですが、この作品4月8日に公開ですので、ゴールデンウィークまで公開が続いているかがちょっと微妙。ですので、前作はあとで観ることにして丸の内ピカデリーに行ってきました。

『戻ってきた仲間たち』
前作『トレインスポッティング』は監督にとっても俳優にとってもまさに出世作でした。ダニー・ボイル監督はこの作品で名を挙げ、2008年制作の『スラムドッグ$ミリオネア』ではアカデミー賞作品賞・監督賞他を受賞。主演のユアン・マクレガーの活躍は言うに及ばず、ユエン・ブレムナーもジョニー・リー・ミラーもロバート・カーライルもみんなもう大活躍です。

では、何故、続編の制作が20年後だったのか?その理由は「MovieWalker」の記事にあります。
ダニー・ボイル監督が過去にユアン・マクレガーにひどい仕打ちをしたことを謝罪
監督と主演の仲違いに、デカプーちゃんが関係したとは思いませんでした。しかしこの20年という続編の公開までの年月は、脚本で本当に上手く活かされています。

20年前金を持ち逃げして、新しい世界に旅立ったレントン(ユアン・マクレガー)は、アムステルダムで会計の仕事をしていましたが、結婚にも失敗し、おまけにジムでランニング中に心臓発作。一命をとりとめたレントンは故郷に戻ることを決心します。

実家に戻ると老いた父親が彼を迎えますが、母はすでに亡くなっており、母親が息子がいつかえってきても良いように昔を同じままにしてくれていた部屋だけが彼を待っています。故郷に戻っても行き場のないレントンは、昔の仲間の元へ。20年前仲間と一緒に稼いだ鐘を持ち逃げしたレントンでしたが、実は彼が逃げ出すのを見逃してくれていた心優しいジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)の元を訪れると、レントンからの分前(あぶく銭)でさらに麻薬に溺れてしまったスパッドは、何回も麻薬を断とうとしますが果たせず、失意のもとに自殺をしようとしていました。

何とか自殺を止めたレントンは次にサイモン(ジョニー・リー・ミラー)に会いに行きます。レントンとサイモンは和やかに話し始めますが、金を持ち逃げされたことを恨んでいるサイモンはすぐにレントンと殴り合いの喧嘩に。しかし、親友同士であった二人はそのうちにお互いの置かれた惨めな状況を理解し、また悪事を企むことになる。

さて、もう一人の登場人物ベグビー(ロバート・カーライル)は殺人罪で服役中。弁護士に仮釈放を申請するも上手く行かず、一計を案じて見事に脱獄に成功、彼も故郷に戻ってきます。ということで、また前作の4人が揃いますが、さて彼らはどうなっていくのか???というのが『T2 トレインスポッティング』の出だしです。

あれから20年!レントン・サイモン・スパッド・ベグビーはみんな中年です。故郷スコットランドのエジンバラも、20年前の大不況をユーロ統合により救われ、失業者で溢れていた汚い町並みもすっかり綺麗になっています。だがしかし、彼ら4人はまったくその恩恵を受けるに至らず、しかも『明日のことなんか関係ないのだ、今この時間をドラッグで決めて楽しくやれば良いんだ』なんて無軌道なエネルギーはもう無い。それぞれに、なにがしかの係累を持っていて、この先どうして生きていけばよいのかを考えざるを得ない年齢になっています。つまり『中年の危機』ってやつに悩まされるわけです。

私はもう老年ですので、その時期はとっくに通り過ぎていますが、この映画を観て、色々と思うことはありました。個人的には、スパッドの描かれ方に一番ぐっと来ましたが、映画を観る人それぞれにいろんな思い入れを感じることだと思います。ダニー・ボイル監督ですので、サウンドトラックはいつものように素晴らしい!そして、撮影監督のアンソニー・ドッド・マントルの仕事も素晴らしいの一言。若い人も中年の人も老年の人も是非ご覧になってみてください。お勧めいたします。

『イギー・ポップ』
最後にこの曲を歌っているイギー・ポップのこと。
Iggy Pop - Lust For Life  YouTubeより

軽快でとってもポップで良い曲ですが、イギー・ポップといえば、山崎ハコファンの私としては最近とても身近な存在です。というのはイギー・ポップがBBCで担当しているラジオ番組において、山崎ハコさんの曲『ヘルプ・ミー』と『望郷』を2日にわたってかけたという情報が、イギリスのハコファンからもたらされたからです。

この情報を調べてみると、
http://www.bbc.co.uk/programmes/b08kgntw
http://www.bbc.co.uk/programmes/b08hzq7m?ns_mchannel=social


確かに、Hako Yamasaki Help Me (Tsunawatari)  
    Hako Yamasaki Nostalgia
 かけてます!

だから何だと言われたらそれまでなんですが、そして映画とは全く関係のない話ですが、イギーと関係がある話なので書いてみました。蛇足でした。


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2017年04月18日

人生タクシー

T0021736p.jpg 英題:TAXI
 製作年:2015年
 製作国:イラン
 日本公開:2017年4月15日
 上映時間:1時間22分
 配給:シンカ
 提供:東宝東和
 監督:ジャファル・パナヒ
 キャスト:ジャファル・パナヒ
見どころ:『カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界三大映画祭での受賞経験を持つ名匠ジャファル・パナヒ監督によるユニークな人生賛歌。イラン政府への反体制的な行動によって、映画制作を禁じられたパナヒ監督自らタクシーの運転手にふんし、車内に設置したカメラで客たちの様子を撮影。監督と乗客の会話を通じ、情報が統制されているテヘランに暮らす人々の人生模様を映し出し、第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。シネマトゥデイより』

『イラン映画』
イラン映画はほとんど観たことがありません。巨匠キアロスタミ監督の映画は『トスカーナの贋作』だけですし、ファルハディ監督も『別離』『彼女が消えた浜辺』のみ。そして恥ずかしながら、今作品の監督ジャファル・パナヒさんについてはまったく知りませんでした。

この映画は文化放送大竹まことゴールデンラジオ!に出演したいとうせいこうさんの紹介です。
いとうせいこう×光浦靖子×大竹まこと「映画『人生タクシー』」2017.03.23
いとうせいこうさん、番組ではいろんなものを紹介してくださっています。先日ブログにアップした『ムーンライト』もいとうせいこうさんの紹介でした。

『フェイクドキュメンタリー』
映画終了後、森達也監督と松江哲明監督のトークイベントがありました。
森達也監督と松江哲明監督が語る制約がある面白さ『人生タクシー』公開初日イベント

パナヒ監督は、政府への反体制的な活動を理由に2010年より“20年間の映画監督禁止令”を受けていますので、この作品も映画ではなくタクシーの車内映像記録であるという体になっています。ですから、当然での外国での映画公開イベントに出席なんてことは夢のまた夢。

代理(?)として出席のお二人の監督は『人生タクシー』にインスパイアされて制作した短編映画上映の後、本作の魅力を語られました。森監督の『映画を撮ることを禁じられた映画監督の映画のような映像』の絶妙な居心地悪さ、松江監督の『ちいさな宝物 Ein Kleiner Schatz』の場違い感、それぞれに楽しめましたが、面白かったのはやはりトークセッション。

松江監督の、
『この映画は見る人によってはドキュメンタリーに見えます。
 枷があるからこそドキュメンタリーよりドキュメンタリーになっていますよね。
 枷を作ることで自由が見えてくる。そういう映画好きなんですよ。』


森監督の、
『多少は制約あった方がドキュメンタリーとかは面白くなる。
 中国とか、ミヤンマーとか・・・。さすがに北朝鮮はね、撮れないけれど。
 ・・・これから日本ドキュメンタリー面白くなると思いますよ。』


特に、森監督の『これから日本ドキュメンタリー面白くなると思いますよ』には大爆笑してしまいました。森監督の発言、かなりブラックですが、こういうユーモアが大事でしょう!『人生タクシー』もパナヒ監督を取り巻く状況はかなり深刻ですが、そんな中で映画製作を諦めない姿勢が凄いし、決してユーモアも忘れていない。

公式サイトに監督のメッセージが掲載されています。
是非読んでみてください。TOPページの一番下の部分に掲載されています。
http://jinsei-taxi.jp/

『どんなふうにして撮ったのだろう??』
パナヒ監督はタクシー運転手に扮してセットしたハディカムを時々動かすのみ。
客に扮した俳優さんがタクシーに乗っては降りていく。

普通に考えればかなりピントが合ってなかったりブレの多い映像になってしまうと思いますし、ハプニングの多いストーリーになってしまうと思うのですが、映像はすこぶる鮮明で、客として乗ってくる姪のハンディビデオの映像なんかも素材として使って、編集の上手さもあると思いますが、素晴らしい映画になっています。しかも上品がユーモアが漂う映画に!

パナヒ監督はタクシーを運転しているだけに見えますが、その陰で時間調整や交通整理や見張り(!?)などを行っているスタッフの努力があるのでしょう。イラン映画を支える映画人の気骨も見事です。他のパナヒ監督作品俄然観たくなりました。

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2017年04月17日

ムーンライト

T0021623p.jpg 英題:MOONLIGHT
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年3月31日
 上映時間:1時間51分
 配給:監督・脚本:バリー・ジェンキンズ
 脚本:タレル・アルヴィン・マクレイニー
 エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピットファントム・フィルム
 キャスト:マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、ジャネール・モネイ
アレックス・ヒバート、アッシュトン・サンダース、トレヴァンテ・ローズ      

『三人のシャロン』
マイアミの貧困地域で暮らすアフリカ系アメリカ人のシャロンが人生の居場所を求めて彷徨う姿を、幼少期・少年期・青年期の三つのステージで描き出した作品です。三つのステージは、別々のまったく容姿に共通点のない俳優によって演じられていますが、何故か違和感を感じません。どうしてかなあと思っていたのですが、公式サイトを見て納得しました。
http://moonlight-movie.jp/

T0021623p (1).jpg

ポスター3人の顔の合成写真だったのですね!
ムーンライト33.jpg

『ストーリー』
最初のステージ”リトル”のシャロンを演じるのはアレックス・ヒバート
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『月明かりで、おまえはブルーに輝く』

スラム街で母親と暮らすシャロン。小さくてナヨナヨしているため学校でも近所でも悪ガキたちいじめられているが、売春で生計をたてている母は客が来ると彼を家から追い出すのでシャロンには居場所がない。ある日ガキ達に追いかけられ廃屋に逃げ込んだシャロンは、ファン(マハーシャラ・アリ)に助けられるが、怯えているシャロンは何も話そうとしない。

ファンはシャロンを家に連れ帰り、恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)に食事を作らせ食べさせる。シャロンは少しずつ心を開くようになり、ファンはシャロンに『自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな。』とやさしく語りかける。

その後、シャロンは時々ファンの家に行くようになり、テレサの手料理を食べたり、家に泊めてもらうようになるが、ある日シャロンはファンが麻薬の売人であることを知り、母親が手を出している薬物もファンから買っていることを知って・・・・。

ファンは故郷のキューバで大人たちから『黒人は月明かりの中でブルーに輝き、とても美しい存在なのだ』と教えられ、そのことをシャロンに泳ぎを教えている時に伝えます。ファンは麻薬の売人であり、ファンの母親にも薬を売っていますが、同時にどこにも居場所のないシャロンのことを純粋に心配し助けてやりたいとも思っています。映画は、淡々とその両方を簡潔に描き出しています。

次のステージのシャロンを演じるのはアッシュトン・サンダース
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『泣きすぎて、自分が水滴になったようだ』

シャロンは相変わらずテレサの家に通っていますが、ファンがもうこの世にいません。母親の薬物中毒はますますひどくなり、シャロンにテレサにお金貰ってるんだろうとたかるようになっています。シャロンは相変わらず学校でいじめを受けていますが、幼い頃からの唯一の友達であるケヴィンが心の支えになっています。

シャロンをいじめている奴らはケヴィンの腕っ節が強いことに目をつけ、ケヴィンにシャロンを殴るように仕向けます。ケヴィンはやむなくシャロンを殴りますが、殴られても起き上がろうとするシャロンに頼むから立たないでくれといいますが、シャロンは立ち上がります・・。

その夜、親友に殴られてショックを受けたシャロンは夜の浜辺で過ごそうとするのですが、そこにケヴィンがやってきて、お互いに傷つけあった二人は初めて、互いが惹かれ合っていることを気づきます。そしてその翌日、シャロンはある行動に出ます。

父親代わりだったファンがこの世を去り、自分を守ってくれる存在がなくなったシャロン。自分は、黒人であり、貧弱な身体しか持ちあえず、しかも自分が性的にマイノリティであることに苦しんでいます。いじめられ、自分が水滴になってように思えるほど泣いたシャロンが取った行動とは?

最後のステージのシャロンを演じるのはトレヴァンテ・ローズです。
公式サイトに浮かび上がる文字は、
『あの夜のことを、今でもずっと、覚えている』

大人になったシャロン、見違えるようなマッチョな身体に自分を鍛え上げていますが、生業は麻薬の売人をやっっています。そんな彼にケヴィンから連絡が入ります。ケヴィンは料理人となりレストランで働いていますが、そこのジュークボックスでかかった曲を聴いてシャロンを思い出したので連絡してきたとのこと。

シャロンはケヴィンからの連絡に動揺しますが、結局会いに出かけます・・・。

『アリとマクレニーとジェンキンス』
アカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリはファンの役を演じましたが、彼が登場するのは最初のステージのみです。小さなシャロンの父親代わりの役ですが、同時にシャロンの母に麻薬を売っています。とても複雑な役なので、その矛盾に葛藤するのが普通の映画の作法だと思うのですが、彼はその全てを受けて入れて、それでも小さなシャロンを守ることに躊躇しない人間として存在しています。この器の大きさはマハーシャラ・アリという俳優があってこそ表現することが出来たのではと思います。これから、いろんな作品に引っ張りだこになる俳優さんだと思います。

本作の原案を考え、映画の脚本も担当したタレル・アルバン・マクレイニー、そしてマクレニーと一緒に脚本を書き、映画の監督も担当したバリー・ジェンキンズは、アカデミー脚色賞と作品賞を受賞しました。二人は映画の舞台となったマイアミのリバティ・シティ公営住宅で育ち、ともに麻薬中毒の母親に育てられ、学年は違うものの同じ小学校と中学校に通い、それぞれに才能を見出してくれる人に恵まれて、奨学金を得て大学に進みました。

麻薬の売人や売春でしか生活していけない境遇が現実に存在しているけれど、地獄のような境遇においても助けようと手を差し伸べ、背中を押してくれる人が存在する。ファンの『自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな。』という言葉は、タレル・アルバン・マクレイニーとバリー・ジェンキンズが誰かから学び、心にずっととどめていた言葉なのでしょう。とても当たり前のことを言っているだけですが、重みがあります。

『カラーリスト』
シネマトゥデイにこんな記事がありました。
アカデミー賞作品賞『ムーンライト』かつてない色彩美はこうして生まれた!

この映画の素晴らしい映像は、撮影後にカラー処理をされているからなんですね。このことは町山さんがたまむすびでも語っておられました。

町山智浩 映画『ムーンライト』を語る miyearnZZ Laboさんの書き起こしより

アレックス・ビッケルさんという方が色彩加工をされているんですね。町山さんは、『こんなに加工しちゃうっていうことはもう何も信じられないっていうことですね。』と語っておられますが、この映像加工があったからこそ、こんなにも悲惨なストーリーな『ムーンライト』が純愛を描いた美しい作品として心に残るのだとも思えます。



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2017年04月13日

LION/ライオン 〜25年目のただいま〜

T0021637p.jpg 英題:LION 
 製作年:2016年
 製作国:オーストラリア
 日本公開:2017年4月7日
 上映時間:1時間59分
 配給:ギャガ
 監督:ガース・デイヴィス
 キャスト:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム
      ニコール・キッドマン、サニー・パワー、アビシェーク・バラト

『勘違い』
予告編を何回も何回も観て(観せられて)きましたので、映画のシークエンスをある程度想像していましたが、予想は見事に外れてしまいました。

普通に考えれば、主人公役のデブ・パテルが自分の迷子になった場所へ「Google Earth」を駆使しながら少しずつ近づいていくが、主人公が記憶の断片をジグソーパズルのように一枚一枚当てはめていく過程で、主人公が迷子になった5歳の再現映像がサニー・パワーによって演じられ記憶を呼び起こす。そんな流れになると思っていましたが、これが全くの勘違い!原作を読んでいませんので、原作通りのストーリー展開なのかは不明ですが、主人公が迷子になって、オーストラリア人の夫婦に引き取られるまでをしっかりと描き出すのです。

『ストーリー』
さて、デリー北東にあるジャイプール近くの小さな町が主人公サルーの生まれ故郷です。サルーは母と兄そして幼い妹たちと暮らしていますが、貧しい家計を助けるため、兄と一緒に近くのカンダワ駅で仕事を探すことに。しかし幼いサルーですから夜もふけて眠くなり兄と行動をともに出来なくなり、兄から仕事を探してくるからホームで自分が戻ってくるのを待ってろと言われます。ホームのベンチで寝ていたサルーがしばらくして目を覚ますと、ホームには回送電車が着いており、サルーはいつものように電車の中で落ちている小銭を探し始めますが、探しているうちになんと回送列車は動き出し、そこから1,600km離れたコルカタまでサルー連れて行ってしまいます。

大都会において一人ぼっちとなった主人公は駅で必死に故郷に帰りたいと訴えますが自分の生まれた街の名前をうろ覚えな5才児です、結局浮浪児となりコルカタの街を彷徨うことになり、小児奴隷として売り払われる危機にも直面しますが、何とか危機を乗り越え、孤児院に収容され、幸いなことにオーストラリア人の夫婦に引き取られることになるのです。

映画の制作陣は、先ずは5歳の時の主人公を演じることが出来る子役を何千人ものオーディションで見つけ出します。それが5歳のサルーを演じたサニー・パワーですが、カメラは彼の目線で、迷子になったシーン、コルコタの駅の雑踏でもみくちゃになるシーン、浮浪児として街を彷徨うシーン、孤児院で過ごすシーンを見事に映像化します。そして5歳のサルー役を演じたサニー・パワー君素晴らしいです。表情の変化だけで色んなことを表現してみせてくれます。彼をオーディションで見つけ出した制作陣の慧眼に拍手です。

それにしても、なにもここまで忠実に再現しなくてもと、インドのことなんか何にも知らない私でも思ってしまうほどの映像なのですが、もし最初にこの展開がなくて、成人となった主人公役のデブ・パテルが自分の迷子になった場所へ「Google Earth」を駆使しながら少しずつ近づいていくことだけの映画だったら、きっと底の浅いものになってしまったであろうと思いますから、やはりこれが王道で正解なのでしょうね。

『故郷にたどり着くまで』
さて、幼いサルーがオーストラリア人の夫婦に引き取られ、教育を受け、立派に成人しますが、ある日友人の家のパーティーに招かれたおりに、その家で幼いころに目にしていたインドのお菓子を目にします。プルースト効果なのでしょうか、サルーは突然自分がどうしてオーストラリアに引き取られたのかを思い出し、兄と母が今でも自分のことを探しているのだと思うと居ても立ってもおられなくなり、幼いころの記憶を頼りに故郷を探し始めるのです。さて、サルーはどのようにして、故郷にたどり着くのでしょう??

ということでこの先はネタバレになりますので、書くことが出来ませんが、自分を育ててくれた養父母への感謝の気持ちと、きっとずっと自分を探してくれているはずの母と兄への思いに引き裂かれてしますサルーに対して、ニコール・キッドマン演じる養母スーが語る言葉が、もうあまりにも感動的で涙腺決壊でした。

もちろん、映画のタイトルにもあるように、主人公サルーは実母に”25年目のただいま”を言うのですが、この映画の感動の多くはサルーを養子として迎え入れてくれた養父母の無償の愛に対してのものでした。映画のエンドロールで、実母カムラさんと養母スーさんが実際に出会うシーンが映されますが、公式サイトによれば、デイヴィス監督は撮影にあたり、サルーが歩んだ道を実際に出来る限り辿ることに努め、サルーの産みの親カムラと育ての親スーが初めて会った瞬間にも立ち会ったとのこと。これは、映画化してことでも幸せな副産物ですね。映画が終わってもすぐに席を立たずに、ぜひこの映像もご覧になってください。

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2017年03月23日

たかが世界の終わり

T0021517p.jpg 英題:IT'S ONLY THE END OF THE WORLD
 製作年:2016年
 製作国:カナダ/フランス
 日本公開:2017年2月11日
 上映時間:1時間39分
 配給・提供:ギャガ
 提供:ピクチャーズデプト / ポニーキャニオン / WOWOW / 鈍牛倶楽部
 監督・脚本・編集:グザヴィエ・ドラン
 原作:ジャン=リュック・ラガルス
撮影:アンドレ・トュルパン
音楽:ガブリエル・ヤレド
美術:コロンブ・ラビ
キャスト:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール
     ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ

『今度は家族』
一昨年公開の『Mommy/マミー』ですでにドラン監督には一度ノックアウトされています。
発達障害を持つ息子を主人公に据えて、人はどこまで自己犠牲できるのかを描き出した映画だと思うのですが、自己犠牲というテーマをただのヒューマンドラマに落とし込まず、母と息子という閉ざされた関係性に隣人を一人持ち込むことで、テーマをさらに普遍的なレベルまで高めて描き出した技量に、ただただ感心したものです。母親・息子・隣人、それぞれが全力を尽くし、その先にかすかに視えてくる希望。グザヴィエ・ドラン監督の作品は初めてでしたが、2015年に観た映画の中で一番心に刺さった映画でした。

そして今作、母の存在と父の不在という設定は変わりませんが、今度は母と息子だけが中心ではなく、そこに兄と妹、それから他者として兄の嫁が加わりました。つまり、家族の物語なのです。

余命僅かなことを知った主人公が、12年ぶりに帰郷し、家族と再会し、戻っていく迄のストーリー。

しかし、主人公がどうして12年も家に帰らなかったのか?
    12年前にどうして家を出つことになったのか?
    主人公はどんな病に犯されているのか? それらは全て説明されず、
    帰省し、家族との会い、またパリに戻っていきます。

主人公で、12年前に家を出て、その後劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りします。母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物を食卓に並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もルイとの再開を心待ちにしています。しかし、兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)は何故か不機嫌そうで、いつものことなのか母と言い争っており、其の様子を兄の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)は心配そうに見つめている。

母マルティーヌと妹シュザンヌは主人公ルイがの帰省を喜んでいるが、母は小さかった頃のルイを懐かしむばかりで、昔話ばかりを繰り返し、妹は劇作家として成功した有名人という目でしか兄を捉えることが出来ない。兄アントワーヌは何故か家に戻ってきたルイへの苛立ちを隠さず、弟へ厳しい言葉を投げつけては母と諍いを繰り返す。12年ぶりに再開したはずなのに、会話は上滑りし、コミュニケーションが成り立たない。

そんな家族の姿を、グザヴィエ・ドランは極端に顔のアップを多用する映像で描き出します。スクリーンには俳優たちの顔が画面全体に映し出され、観客は上滑りし内容のない会話ではなく、俳優たちの顔の表情の変化で、登場人物の心の細かな動きを感じ取る。ドラン監督は映画ごとに様々な手法に挑戦するタイプの監督で、『Mommy/マミー』で主人公が手で画面をこじ開けるシーンには驚愕しましたが、今回の作品での画面全体を顔のアップで埋め尽くす手法にも本当に驚愕しました。

主人公のルイを演じたギャスパー・ウリエルも、
『今回のような至近距離での撮影では、呼吸、まばたきのひとつひとつをカメラが
 捉えてくれるという感覚が素晴らしかった。』
映画の公式サイトより
とインタビューで答えていますので、俳優にとっても素晴らしい経験であったようです。

もう一つ兄を演じたヴァンサン・カッセルはドラン監督のことを、
『自分に嘘をつかない男だ。そこには彼独特のスタイルがあって、僕らには理解不能な何かがある。彼ならではのカメラの動かし方、ストーリーの語り方、感情の引き出し方があるんだ。ロジックは存在しない。次第に形になり、周囲にはその仕上がり像が曖昧だったのに、完成した瞬間、打ちのめされるんだ。』 と答えています。

カッセルは俳優ですからアントワーヌのような嫌な役どころを演じることに何のためらいないし、喜んであの役を演じていたのだろうけれど、作品が出来上がり試写を観て、兄の弟への愛がこんなにも描き出されていることにびっくりしたのでしょう。

公式サイトによれば、この作品を創るきっかけは『Mommy/マミー』を出品したカンヌ国際映画祭で、ドラン監督がマリオン・コティヤールに出会い、彼女と一緒に仕事がしたいと思ったことだそうですが、出演したコティヤールのあの”気配の消し方”は本当に凄い!彼女も凄いし監督も凄い。しかも気配が消えているのに、映画を見終わると彼女のことが一番心に残っている!

やはりグザヴィエ・ドランは天才なんだ!
本当にそう思えた映画でした。
是非是非、グザヴィエ・ドランを経験ください。全力でお勧めします。



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2017年03月05日

ラ・ラ・ランド

T0021440p.jpg 英題:LA LA LAND
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年2月24日
 上映時間:2時間8分
 配給・提供:ギャガ / ポニーキャニオン
 製作会社:Summit Entertainment
 監督・脚本:デイミアン・チャゼル
 キャスト:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス
ストーリー:『ストーリー:何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。シネマトゥデイより』

『シネマスコープ!』
前評判が最高で、しかも主演が大好きなライアン・ゴズリングとエマ・ストーン。期待するなという方が難しい話で、封切り日が待ち遠しい毎日でした。どこの映画館でみるかも考えました。IMAXとかTCXという選択もありましたが、先ずは普通の映画館で見ることとし、同年代の映画ファンが多そうな日比谷シャンテを選択。いそいそと出かけたのではありました。

映画が始まるとシネマスコープサイズの画面が現れ(公式サイトによれば、『シネマスコープのフィルムは現在では2.4対1の比で撮られるが、本作は特別な雰囲気を加えるために昔の映画のように2.25対1で撮られた』とのことだそうだ!)、ロスの高速道路でのフラッシュモブ映像に。テンポの良い音楽とキレッキレの群舞!ヴィンセント・ミネリの『巴里のアメリカ人』や『バンド・ワゴン』を彷彿とするシーンに凄いミュージカル映画が始まるんだと期待は更に膨らんだのです。

しかしながら・・・・・。

威勢が良かったのはここまでで、あとはおとなしいダンスと唄、落ち着いたダンスと唄の連続。いわゆる『ミュージカル臭』を出さないように配慮した結果が、ヒットに繋がったのだと思いますが、ダンスもハイウェイシーン以外は小粋(?)なダンスの連続ですし、唄についてもドラマとのギャップを避けるためもあるのでしょうが歌い上げることは無い!

この作品は瀕死の状態であった(あるいはもう死んでいた)ミュージカル映画と称されているようですが、個人的には『もうミュージカル臭が凄いんじゃ!』というミュージカルをとてもとても愛していますので、これでは物足りない。フレッド・アステアやジーン・ケリーに匹敵するダンスがなくても良いけれど、少なくともダンスや歌でもっと陶酔させてくれよと思えてしまう・・・・。

そんなわけで、期待しすぎだったのこともあるのですが、少しながら残念な気持ちで劇場を後にしました。それにしてもジョン・レジェンド。あのバンド、ジャズと縁もゆかりもない音楽をやっていましたね。本当にチャゼル監督が救いたいジャズって、どんなジャズなんだろうとしばらく考え込んでしまいました。別にジャズはチャゼル監督が救わなくても生きているし、ジャズを志す若者もいる。

『ジャズを救う!』チャゼル監督のそんな上から目線が私には気に入らないのかもしれません。

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2017年02月27日

第89回アカデミー賞受賞結果

オープニングはジャスティン・ティンバーレイクが登場して軽妙に始まったのですが、司会のジミー・キンメルの登場で空気が一変しましたね。とにかく反トランプ!社会が分断され、人種が差別され、特定の国が言われない排斥を受ける、そんな風潮へのノーが高らかに(??)ではなく、とても皮肉に宣言された。

そして最初の受賞者が「ムーンライト」のマハーシャラ・アリだったので、これは「ラ・ラ・ランド」のマルチ受賞はないなとお思いました。そして序盤まったくオスカーが「ラ・ラ・ランド」にいかなくて、これは!と思ったのですが、途中から流れが変わり、そして監督賞がデイミアン・チャゼルに行ってしまい、かなり失望してきました。

そしてそして、最後にフェイ・ダナウェイがウォーレン・ビーティーの代わりに作品賞を「ラ・ラ・ランド」と読み上げたときには「あ〜あ〜」と思ったのですが、これがスタッフの手違いで「ムーンライト」が本当の受賞作品ということでマックスのカタルシス!ちなみに、予想は主要6部門で5勝1敗、それなりです。

色んな意味でとても面白い授賞式でした。

個人的に印象に残ったのは、
1.司会ジミー・キンメルのオープニングトーク
2.メリル・ストリープへのスタンディングオベーション
3.キンメルとマット・デイモンの掛け合い漫才
4.ヴィオラ・デイヴィスの受賞スピーチ
5.フェイ・ダナウェイとウォーレン・ビーティーに手を振るシャーリー・マクレーン
6.「ムーンライト」の受賞者それぞれのスピーチ

※Twitterにシャーリーが手を振っている映像がアップされていましたので引用します。
https://twitter.com/alansmithee1964/status/836108756198924288
可愛らしい!少年のようだ!褒め言葉かな!??

【作品賞】
 「メッセージ」
 「フェンシズ (原題)」
 「ハクソー・リッジ (原題)」
 「最後の追跡」
 「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
 「ラ・ラ・ランド」
 「LION/ライオン 25年目のただいま」
 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
☆◎「ムーンライト」

【監督賞】
 ドゥニ・ヴィルヌーヴ「メッセージ」
 メル・ギブソン「ハクソー・リッジ (原題)」
☆デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
 ケネス・ロナガン「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
◎バリー・ジェンキンス「ムーンライト」
 トム・フォード「ノクターナル・アニマルズ (原題)」

【主演男優賞】
 デンゼル・ワシントン「フェンシズ (原題)」
 アンドリュー・ガーフィールド「ハクソー・リッジ」
 ライアン・ゴズリング「ラ・ラ・ランド」
 ヴィゴ・モーテンセン「はじまりへの旅」
☆◎ケイシー・アフレック「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

【主演女優賞】
 イザベル・ユペール「エル (原題)」
 ルース・ネッガ「ラビング 愛という名前のふたり」
 ナタリー・ポートマン「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」
☆◎エマ・ストーン「ラ・ラ・ランド」
 メリル・ストリープ「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」

【助演男優賞】
 ジェフ・ブリッジス「最後の追跡」
 ルーカス・ヘッジズ「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 デヴ・パテル「LION/ライオン 25年目のただいま」
 マイケル・シャノン「ノクターナル・アニマルズ (原題)」
☆◎マハーシャラ・アリ「ムーンライト」

【助演女優賞】
☆◎ヴィオラ・デイヴィス「フェンシズ (原題)」
 ミシェル・ウィリアムズ「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 オクタヴィア・スペンサー「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
 ナオミ・ハリス「ムーンライト」
 ニコール・キッドマン「LION/ライオン 25年目のただいま」

【脚本賞】
 テイラー・シェリダン「最後の追跡」
 デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
 ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリプ「ロブスター」
☆◎ケネス・ロナーガン「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 マイク・ミルズ「20センチュリー・ウーマン」

【脚色賞】
 エリック・ハイセラー「メッセージ」
 ルーク・デイヴィス「LION/ライオン 25年目のただいま」
 オーガスト・ウィルソン「フェンシズ (原題)」
 アリソン・シュローダー&セオドア・メルフィ「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
☆◎バリー・ジェンキンス&タレル・アルヴィン・マクレイニー「ムーンライト」

【撮影賞】
◎ロドリゴ・プリエト「沈黙―サイレンス―」
 ジェームズ・ラクストン「ムーンライト」
☆○リヌス・サンドグレン「ラ・ラ・ランド」
 ブラッドフォード・ヤング「メッセージ」
 グレイグ・フレイザー「LION/ライオン 25年目のただいま」

【美術賞】
 「メッセージ」
 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
 「ヘイル、シーザー!」
☆◎「ラ・ラ・ランド」
 「パッセンジャー」

【音響編集賞】
☆「メッセージ」
 「バーニング・オーシャン」
 「ハクソー・リッジ(原題)」
◎「ラ・ラ・ランド」
 「ハドソン川の奇跡」

【編集賞】
 「メッセージ」
 「ハクソー・リッジ(原題)」
 「最後の追跡」
◎「ラ・ラ・ランド」
 「ムーンライト」

【視覚効果賞】
 「バーニング・オーシャン」
○「ドクター・ストレンジ」
☆「ジャングル・ブック」
 「クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス (原題)」
◎「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

【衣装デザイン賞】
 ジョアンナ・ジョンストン「マリアンヌ」
☆コリーン・アトウッド「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
 コンソラータ・ボイル「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」
 マデリーン・フォンテーヌ「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」
◎メアリー・ゾフレス「ラ・ラ・ランド」

【メイク・ヘアスタイリング賞】
☆◎「スーサイド・スクワッド」
 「幸せなひとりぼっち」
 「スター・トレック BEYOND」

【長編アニメ映画賞】
 「Kubo and the Two Strings」
 「モアナと伝説の海」
 「My Life as a Zucchini」
 「レッドタートル ある島の物語」
☆◎「ズートピア」

【歌曲賞】
○“Audition(The Fools Who Dream)”「ラ・ラ・ランド」
 “Can't Stop the Feeling”「Trolls」
☆◎“City of Stars” 「ラ・ラ・ランド」
 “The Empty Chair”「Jim: The James Foley Story(原題)」
 “How Far I'll Go”「モアナと伝説の海」

【外国語映画賞】
 マーチン・ピータ・サンフリト監督「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク)
○ハンネス・ホルム監督「幸せなひとりぼっち」(スウェーデン)
☆アスガー・ファルハディ監督「セールスマン」(イラン)
 ベントレー・ディーン&マーティン・バトラー監督「Tanna(原題)」(オーストラリア)
◎マーレン・アーデ監督「ありがとう、トニ・エルドマン」(ドイツ)


以上です。

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第89回アカデミー賞直前予想

いよいよ明日だと思っていたら、なんと今日だったのね!ということで、あと1時間ちょっとでアカデミー賞の中継が始まってしまうところでの直前予想となりました。今年のアカデミー賞は最多14部門にノミネートされた「ラ・ラ・ランド」が果たしていくつオスカーを獲得するかに話題が集まっているように感じますが、封切りに同作品を見た印象から考えると、音楽部門と映像部門のオスカーは取っても、あとは主演女優賞が取れるかどうか程度の評価しか出来ませんでした。『なんか志が低いんだよなぁ!』との思いしか持てない作品でした。個人的には、未見ですが「ムーンライト」と「フェンシズ (原題)」に期待してアカデミー賞授賞式を楽しみたいと思います。では予想です。

【作品賞】
 「メッセージ」
 「フェンシズ (原題)」
 「ハクソー・リッジ (原題)」
 「最後の追跡」
 「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
 「ラ・ラ・ランド」
 「LION/ライオン 25年目のただいま」
 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
◎「ムーンライト」

【監督賞】
 ドゥニ・ヴィルヌーヴ「メッセージ」
 メル・ギブソン「ハクソー・リッジ (原題)」
 デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
 ケネス・ロナガン「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
◎バリー・ジェンキンス「ムーンライト」
 トム・フォード「ノクターナル・アニマルズ (原題)」

【主演男優賞】
 デンゼル・ワシントン「フェンシズ (原題)」
 アンドリュー・ガーフィールド「ハクソー・リッジ」
 ライアン・ゴズリング「ラ・ラ・ランド」
 ヴィゴ・モーテンセン「はじまりへの旅」
◎ケイシー・アフレック「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

【主演女優賞】
 イザベル・ユペール「エル (原題)」
 ルース・ネッガ「ラビング 愛という名前のふたり」
 ナタリー・ポートマン「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」
◎エマ・ストーン「ラ・ラ・ランド」
 メリル・ストリープ「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」

【助演男優賞】
 ジェフ・ブリッジス「最後の追跡」
 ルーカス・ヘッジズ「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 デヴ・パテル「LION/ライオン 25年目のただいま」
 マイケル・シャノン「ノクターナル・アニマルズ (原題)」
◎マハーシャラ・アリ「ムーンライト」

【助演女優賞】
◎ヴィオラ・デイヴィス「フェンシズ (原題)」
 ミシェル・ウィリアムズ「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 オクタヴィア・スペンサー「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
 ナオミ・ハリス「ムーンライト」
 ニコール・キッドマン「LION/ライオン 25年目のただいま」

【脚本賞】
 テイラー・シェリダン「最後の追跡」
 デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
 ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリプ「ロブスター」
◎ケネス・ロナーガン「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 マイク・ミルズ「20センチュリー・ウーマン」

【脚色賞】
 エリック・ハイセラー「メッセージ」
 ルーク・デイヴィス「LION/ライオン 25年目のただいま」
 オーガスト・ウィルソン「フェンシズ (原題)」
 アリソン・シュローダー&セオドア・メルフィ「ヒデン・フィギュアーズ (原題)」
◎バリー・ジェンキンス&タレル・アルヴィン・マクレイニー「ムーンライト」

【撮影賞】
◎ロドリゴ・プリエト「沈黙―サイレンス―」
 ジェームズ・ラクストン「ムーンライト」
○リヌス・サンドグレン「ラ・ラ・ランド」
 ブラッドフォード・ヤング「メッセージ」
 グレイグ・フレイザー「LION/ライオン 25年目のただいま」

【美術賞】
 「メッセージ」
 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
 「ヘイル、シーザー!」
◎「ラ・ラ・ランド」
 「パッセンジャー」

【音響編集賞】
 「メッセージ」
 「バーニング・オーシャン」
 「ハクソー・リッジ(原題)」
◎「ラ・ラ・ランド」
 「ハドソン川の奇跡」

【編集賞】
 「メッセージ」
 「ハクソー・リッジ(原題)」
 「最後の追跡」
◎「ラ・ラ・ランド」
 「ムーンライト」

【視覚効果賞】
 「バーニング・オーシャン」
○「ドクター・ストレンジ」
 「ジャングル・ブック」
 「クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス (原題)」
◎「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」

【衣装デザイン賞】
 ジョアンナ・ジョンストン「マリアンヌ」
 コリーン・アトウッド「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
 コンソラータ・ボイル「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」
 マデリーン・フォンテーヌ「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」
◎メアリー・ゾフレス「ラ・ラ・ランド」

【メイク・ヘアスタイリング賞】
◎「スーサイド・スクワッド」
 「幸せなひとりぼっち」
 「スター・トレック BEYOND」

【長編アニメ映画賞】
 「Kubo and the Two Strings」
 「モアナと伝説の海」
 「My Life as a Zucchini」
 「レッドタートル ある島の物語」
◎「ズートピア」

【主題歌賞】
○“Audition(The Fools Who Dream)”「ラ・ラ・ランド」
 “Can't Stop the Feeling”「Trolls」
◎“City of Stars” 「ラ・ラ・ランド」
 “The Empty Chair”「Jim: The James Foley Story(原題)」
 “How Far I'll Go”「モアナと伝説の海」

【外国語映画賞】
 マーチン・ピータ・サンフリト監督「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク)
○ハンネス・ホルム監督「幸せなひとりぼっち」(スウェーデン)
 アスガー・ファルハディ監督「セールスマン」(イラン)
 ベントレー・ディーン&マーティン・バトラー監督「Tanna(原題)」(オーストラリア)
◎マーレン・アーデ監督「ありがとう、トニ・エルドマン」(ドイツ)

以上です。

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2017年02月01日

マグニフィセント・セブン

T0021185p.jpg 英題:THE MAGNIFICENT SEVEN
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ
 日本公開:2017年1月27日
 上映時間:2時間13分
 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
 製作会社:Metro-Goldwyn-Mayer Pictures、Columbia Pictures他
 監督:アントワーン・フークア
 キャスト:デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク
ストーリー:『悪漢バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サースガード)によって牛耳られ、絶望を感じながら生きているローズ・クリークの町の人々。住民の一人であるエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、拳銃の達人といった7人の男を雇って、バーソロミューの手から町を救い出すように頼む。金のためと割り切って戦いに身を投じるサムやジョシュだったが……。シネマトゥデイより』

『デンゼル・ワシントンとフークア』
デンゼル・ワシントンがアカデミー主演男優賞を受賞した「トレーニング・デイ」そして、凄腕の秘密諜報員を演じた「イコライザー」どちらの作品もアントワーン・フークアの監督作品でした。お互い気心がしれているこの二人が組んで作り上げたのが今作。「トレーニング・デイ」でデンゼル・ワシントンの相棒役であったイーサン・ホーク、それから撮影監督も同じマウロ・フィオーレ。

それから、映画の公式サイトに、
 「重要なのは『七人の侍』のDNAに忠実であること。
  クロサワが生きていれば、現代版のこの物語を観たいと思ってくれると信じている。」

 とのアントワーン・フークア監督のコメントも掲載されています。

ですから尊敬する黒澤監督の作品を、フークア組総結集でリメイクするぞということですよね!

『こだわり』
では、リメイクの出来はどうだったのか?
『七人の侍』というより、『荒野の七人』のフレーバーが香る活劇ウェスタンでしょうか!?
リメイクなので、当然リメイク作品を作っている時代が反映されていて、リーダーが黒人、仲間にもネイティブ・アメリカンズとメキシカンが加わっています。図らずも、これからハリウッドが死守すべき多様性の体現がなされている訳ですが、これはアフリカ系のフークア監督なので、当然といえば当然。

それよりも私が注目したのは、フークア監督の達人へのこだわり。
『イコライザー』で、デンゼル・ワシントンをその場にあるあらゆるものを道具にして相手を秒殺する凄腕の殺し屋として描きましたが、今作ではコルトピースメーカーをグリップを前にして挿し、手を裏返して抜く撃ち方「リバース・ドロー」の達人、寡黙だけどウィットに富んでいて、人当たりが良い一見普通のおじさんなんだけど、実はとんでもない腕の持ち主。

フークア監督、黒澤監督の『用心棒』や『椿三十郎』も好きなんでしょうねえ。三船敏郎演じる椿三十郎が一瞬で三人のならず者を切り捨てるシーン。フークア監督のアクションシーンに大きな影響を与えていると思います。望遠カメラを多用したり、マルチアングルでシーンを切り取る手法も影響を受けていると思いますが、映像にはあまり詳しくないので自信はあまりありませんが・・・。

ネットでの評価を見ていると、主人公が仲間を集める過程がご都合主義だとか、ローズ・クリークの町の人々の描き方がおざなりなので物語に深みが無いというようなコメントが多く、まことにごもっともと思いますが、『荒野の七人』のフレーバーが香る活劇ウェスタンとして、かなり頑張っているのではないでしょうか。なんて上から目線の感想をいだきました。

「トレーニング デイ」「ザ・シューター/極大射程」「クロッシング」そして「イコライザー」。ときどき無性に見たくなる作品たちですが、この「マグニフィセント・セブン」はどうかなあ?ちょっとカタルシスに欠ことが玉に瑕かもです。

posted by たくカジ!!CINEMA at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2017年01月31日

スノーデン

T0021410p.jpg 英題:SNOWDEN
 製作年:2016年
 製作国:アメリカ/ドイツ/フランス
 日本公開:2017年1月27日
 上映時間:2時間15分
 配給:ショウゲート
 製作会社:オープン・ロード
 監督・脚本:オリヴァー・ストーン
 脚本:キーラン・フィッツジェラルド
 原作:ルーク・ハーディング
キャスト:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、メリッサ・レオ
ストーリー:『2013年6月、元CIAおよびNSA(アメリカ国家安全保障局)職員エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の内部告発により、アメリカ政府がひそかに作り上げた国際的な監視プログラムの存在が明らかになる。そこに至る9年の間、国を愛する平凡な若者はテロリストばかりか民間企業や個人、同盟国までも対象とされ、全世界のメールや携帯電話での通話が監視されている現実に危機感を募らせていた。シネマトゥデイより』

昨年公開された『シチズンフォー スノーデンの暴露』は、スノーデン事件を真正面から扱ったドキュメンタリー映画で、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドさんやローラ・ポイトラス監督の目から観たエドワード・スノーデンが描かれていましたが、今作品はオリヴァー・ストーン監督がスノーデン氏の生い立ちを語りつつ、なにゆえ彼が合衆国の機密を暴露するに至ったのかを解き明かしていくという構成になっています。

さて、監督は映画の日本公開に合わせて来日し、様々な媒体から取材を受けています。
私が見たのはTBS「NEWS23」の雨宮アナのインタビューでした。
残念ながらその模様はすでに番組のホームページから削除されていますが、
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2962642.htm

しっかりと書き起こしをやっているサイトがありましたので引用します。
NEWS23 オリバー・ストーン監督が明かした衝撃情報 
「日本は昔持っていた主権がない。アメリカの衛星国で人質なのです」


インタビューでオリヴァー・ストーン監督は、怪しいと思われる対象を絞っての監視は非常に有効な手段だけど、全ての国民を対象とするマス監視は全ての情報を把握することで権力を得ようとする行為だと断言しています。しかし、スノーデン事件のニュースが世界中を駆け巡った時、監督は感銘は受けたけれど自分が映画にしようとは思わなかったと言います。

監督は自らをドラマティストと規定しています。物語を作り、その物語で真実を語る人間であるということなのでしょう。『ます監視の暴露』という事実には物語を感じなかったけれど、縁あってスノーデン本人に合うことが出来、告発に至るまでをスノーデン氏の視点で語ることの可能性を感じたので映画化に踏み切ったと語ります。

監督が日本に対して警告している、スノーデン氏は日本駐在中に、
 『将来的に日本がアメリカの同盟国でなくなったときのためにスパイプログラムをダム、駅、
  発電所、銀行などに組み込んでいた。いざとなれば機能停止に追い込め』
るとの驚愕の事実。

本当に衝撃的なことですが、監督の指摘に応えて、このスパイプログラムについて言及するメディアがほとんどありませんでしたね。まあ、苦笑するしかありません。

実は、『シチズンフォー スノーデンの暴露』が公開された際に、こんな記事もありました。
スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」 小笠原 みどりさん

記事の中で、スノーデン氏は『特定秘密保護法』がアメリカがデザインしたものであることを暴露していますが、日本政府が機密情報を米国と共有するとの誘惑に勝てず、『特定秘密保護法』を強行採決し、米国の世界監視体制を守る同調者として振る舞うことを選択したことへの憂慮を語っています。

アメリカの属国としての立場を受け入れ、人質扱いされても一言の文句も言わず、国民に対しては聞こえの良い情報ばかりを発信する。小笠原氏が『史上最多といわれる難民問題から旧日本軍「慰安婦」問題まで、世界の現場で起きている事象が日本にいる私たちに「自分の問題」として感じられるまでに掘り下げて伝えられているとは言いがたい。特に、日本への批判を含んだ声は、穏便に加工されて出荷されているようにみえる。』と指摘する政府とマスコミの姿勢。

オリヴァー・ストーン版『スノーデン』を見ながら、そんなことを強く思った次第です。
posted by たくカジ!!CINEMA at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画